1993年生まれが、世代をつなぐ。24歳の写真家、小林真梨子が「普通を疑う同い年」をかき集めた意図

Text: Jun Hirayama

Photography: haru unless otherwise stated.

2018.1.15

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「年下も、同い年も、年上も関係ない」。そう言わんばかりに、被写体の世代にとらわれずにシャッターを切り続け、自然光のぬくもり溢れる写真で「平成」を切り取ってきた1993年生まれの写真家、小林 真梨子(こばやし まりこ)。そんな世代を超えて愛される彼女がいま、自分が生まれた「1993年」という世代で切り取り、同い年の表現者を総勢30人以上を集めて、表参道ヒルズに佇むギャラリー「OMOTESANDO ROCKET」で企画展『1993』を開催した。

「大人ですが、それでもどこか子どもみたいにもがきながら今を生きている微妙な時期」と今年25歳になる自身の年齢を表現する彼女が、今回の企画展に込めた意図や、世代の壁を超えて人々に届けたい想いをBe inspired!は聞いた。

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フジロック出演アーティストからタクシー運転手まで。多様な24歳が集結。

今回の企画展「1993」は、会場となったギャラリー「OMOTESANDO ROCKET」に1月に空いている期間があることを小林氏が小耳に挟み、昨年9月から準備を始め、実現した。

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普段から同い年のクリエイターとの親交が深い彼女がすかさず思いついた企画が、「93年生まれを集めたグループ展」だったという。そこで以前から写真家としてだけではなく、キュレーターとして活動する小林氏は、急ピッチで1993年生まれの同い年のクリエイターを総勢30名以上集めた。

「93年生まれ」&「表現者」。そんな二つの共通項をもとに集められた25歳のクリエイターたち。1週目(1月5日〜1月10日)は、1993年生まれの、ミュージシャン、写真家、映像作家、モデル、俳優などを起用したミュージックビデオを撮り下ろし、披露。そして、2週目(1月12日〜1月17日)は、空間イメージを変えて、やはり1993年生まれの自身を含む写真家たちが、上記のミュ ージックビデオ撮影中に別角度から撮りおろした写真を展示した。

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参加したメンバーをさらっとみていくと、フジロックやサマソニなどの夏の大型音楽フェスに引っ張りだこの若手バンドD.A.N.の櫻木 大悟(さくらぎ だいご)氏、DATS/yahyelのMONJOE氏、そして以前Be inspired!でも紹介した映像作家のUMMMI.氏など、いま注目を集める25歳の表現者が名を連ねている。しかし、そんな有名クリエイターだけかと思えば、普段はタクシー運転手をしながらアーティストとして活動している宇都宮 桃子(うつのみや ももこ)氏なども参加しているのだ。同い年という枠組みで、フラットに多様な25歳が集まっていることがよくわかる。

そして「MONO NO AWARE」という名前で知られているバンドの玉置 周啓(たまおき しゅうけい)氏と加藤 成順氏(かとう せいじゅん)が「MIZ」というユニットグループで参加したり、いつもはヒップホップユニット「DOS MONOS」のラッパーとして活動をしている荘子it氏は、映像制作で関わるなど、「今回の企画展は、いつもと違う顔で、いつもと違う分野に挑戦できる場」にもなったんじゃないかと小林氏は語る。

同い年だからこそ、フラットでもあるし、ライバルでもある。今回の人選は、93年生まれで切り取ったけど、無名の同い年のクリエイターでもいいものを作っている人はいるからいろんな人に知ってもらいたいし、有名な同い年のクリエイターとコラボレーションして、一緒に作品を作ることで、刺激しあって、高めあえればいいなと思った

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分断された世代と世代をつなげたいから、世代で切り取る。

「普段は、同い年か下の世代と遊んだり、彼らの写真を撮ることが多い。年上の人には気を遣ってしまう…」と語る小林氏。今回「1993年」というかなり限定された1年で切り取ったことで、逆に「分断された世代と世代をつなげたい」という意図があったと語る。

日本では未だに「若いから」「フリーランスだから」ということを理由に、企業からクリエイターへの報酬が減額されて支払われることが多くある。そんなフリーランサーやクリエイターが生き残るのが困難な日本の現状に、小林氏は「今回の企画展のウェブサイトや販売したZINEに載っている名前を、世代関係なくいろんな人たちが見て、コラボレーションや仕事など新しい可能性やつながりが生まれたらいいな」と語る。また、今回の企画展を通して自分の写真や同い年のクリエーションを上の世代に見てもらうことで、「25歳でもプロの世界で通用するクオリティの作品を作れるんだ」ということを届けたいという。

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最後に、以前Be inspired!でも取材したharu.氏のHIGH(er) magazineやUMMMI.氏の映像のような社会問題をクリエイティブに発信することについてどう思うか?と聞くとこう返ってきた。

二人みたいに社会問題に対して表現して、発信する若いクリエイターがでてくることで、今まで親世代が触れてこなかった政治やセックスなどの既存のタブーに対して、オープンに話していいんだっていう新しい気づきを誰かにもたらせるかもしれないからいいことだと思う!実は私はあんまり社会問題とか、政治とかわからないから、近くにそういう人がいることで、社会問題に関心を持つきっかけになった

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筆者は昨年25歳になり、大学も卒業したし、社会に出て働いているからか、成人したときよりは少し大人になった気分だ。子どもからの出口であり、大人への入口のような微妙な時期、25歳。その世代の心情を絶妙に切り取り、世代と世代をつなげるきっかけを作った小林氏の今回の試み。彼女のような媒介者が、今後日本に新しいクリエーションやコミュニケーションを生み出していってくれるに違いない。

Mariko Kobayashi(小林 真梨子)

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1993年、東京生まれ。大学入学をきっかけに写真を始め、「楽しいこと」を追求しながら写真を撮っている。月刊誌『MLK』を制作ほか、アパレルブランド等の撮影も行う。
初の写真集『ふれる、ゆれる。』販売中。

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「1993」展

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※今回、以前Be inspired!で取り上げたHIGH(er) magazine編集長であり、小林氏の親友でもあるharu.氏が撮影を担当。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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