スタバが次々と世界で「不買」される理由 #AdiosStarbucks #BoycottStarbucks|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会 #011

Text: NEUT編集部

Cover photography: Omar Lopez

2017.2.10

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皆さんこんにちは。今回紹介するのは、おなじみのコーヒーチェーン、スターバックスについてのハッシュタグ・アクティビズムについて。ハッシュタグ・アクティビズムとは、SNS上で「#」をつけて自分の意見を主張したり議論を呼びかけたりするムーブメントです。

日本でも主要な駅のまわりを探せば数店舗見つかるほど人気の高いスタバですが、最近は発祥の地のアメリカ国内やその隣国メキシコで嫌われて不買運動が起きているそうなのです。それはなぜだと思いますか?

#BoycottStarbucks(「スタバをボイコット」)

アメリカの大統領に就任して間もないトランプ大統領が、早速「過激」といえる行動に出ていますね。彼は「“イスラム過激派”からアメリカを守るため」という言い分で、イスラム教徒の人口が多く、難民が多出している7カ国からの入国を拒否する大統領令を出しました。それに対し、これではいけないと思った司法省が大統領令を一時中止させ、トランプ側は不服を申し立てましたが、それを連邦控訴裁判所が退けました。これで入国禁止が無効となって混乱は収束したのですが、今後大統領がどんな強行手段に出るか不安に思う人は多いでしょう。(参照元:朝日新聞デジタル

さて、この入国拒否の大統領令が出た際、アメリカの企業が難民をサポートする行動に出ました。スタバもそのひとつで、「スタバがビジネスを展開する75カ国で1万人の難民を雇う」という方針を発表しています。それに対するボイコットが#BoycottStarbucksです。この背景には、アメリカ国内での失業者の問題と「国内に入ってきた難民や移民に仕事を取られること」に反対しているトランプ支持層が多いことがあります。それから「スタバ=リベラル」の象徴であると考えている保守層がいることも関係があるでしょう。(参照元:Newsweek

ですが、難民を雇用しようとしているのはアメリカ国内だけではないため、実施できたとしてどの程度アメリカ国民に影響が出るのかはわかりません。実はスタバは2013年からの5年間に1万人の退役軍人を雇用することを目標としていて、既に8000人以上の退役軍人がスタバで働いているようなのです。そして難民や移民の入国停止が解除された今は、まず退役軍人の雇用人数の目標達成に力を入れるとみられます。(参照元:Reuters

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Photography: TR

#AdiosStarbucks(スペイン語で「さよならスタバ」)

先ほどの件とは関係なく、スタバはメキシコで#AdiosStarbucksというハッシュタグを使ったボイコットが起きています。これはトランプ大統領が公約に掲げた「メキシコとの国境に壁を建設」に対するもので、スターバックスやマクドナルド、アップルなどのアメリカンブランドをボイコットする動きのひとつに数えられます。「壁」の建設費用をメキシコに負担させようとしていることに対する反感も大きく関係しているかもしれません。ですが、メキシコに輸入されるものの40%程度がアメリカを通ってメキシコに入ってくることを考えると、アメリカと関係を悪化させるとメキシコは経済的に不利益を被りそうですね。(参照元:CNN Money

「文化を壊す」「フェアトレード×」「遺伝子組み換え○」世界で嫌われるスタバ

このようなスタバに対するボイコットですが、今回が初めてではありません。それは文化的や社会的な理由によります。「McDonaldization(マクドナライゼーション)」や「Starbuckization(スターバッキゼーション)」という言葉が生み出されたように、アメリカの大手チェーンの飲食店が自国の飲食業界を席巻して自文化を壊されることを嫌がる国は多く、独自のコーヒー文化を持つオーストラリアではボイコットにより経営の規模を拡大することが難しくなりました。

そのほかにも世界的な大企業なのにもかかわらず、2013年の時点でフェアトレード(適正な価格を守り、労働者を搾取しない取引)のコーヒー豆をたったの8.4%しか使用していないことも、ボイコットの起きる原因になっています。また、通常のフェアトレードのように企業が農家と「適正な価格」での取引ができるよう働きかけるのではなく、スタバの場合は自らに都合のいい価格でコーヒー豆を販売する農園からコーヒー豆を購入しているだけのようです。(参照元:STARBUCKS GLOBAL RESPONSIBILITY REPORT, ORGANIC CONSUMERS ASSOCIATION

最後に、スタバが「遺伝子組み換え」に賛成していることをご存知でしょうか?日本では報道が少なかったようですが、アメリカのバーモント州の「遺伝子組み換え食品の表示を義務づける条例」を差し止める訴訟を遺伝子組み換え作物の種を開発・販売する大手バイオメーカーのモンサント社が起こしていて、それにスタバも参加していたのです。したがって、スタバの食品にも遺伝子が組み替えられた材料が使われているかもしれません。これに対してフォーク歌手の殿堂ニール・ヤングがボイコットを呼びかけ、ファンをはじめとする人々が参加しています。(参照元:Rolling Stone

「ボイコット」という消費者の力

日本では人気の根強いスタバですが、世界を見てみるとスタバは好かれてばかりではないようですね。「ボイコット」という言葉も日本ではあまり聞かないですが、世界を見ると多く起きています。それはいい意味でも悪い意味でも、政策に共感できない企業を経営できなくさせる「消費者の力」ではないでしょうか。

言うまでもないことですが、消費者が商品やサービスにお金を出してくれなければ企業は成り立たないのです。商品が良くても考え方に納得できないブランドにお金を払い続けると、そのブランドが悪い意味で発展していってしまうかもしれません。「納得できる企業の商品を買う」という価値観は、消費することではなく「心の豊かさ」や「ウェルネス」にお金を払うミレニアルズの消費に対する価値観にも近いと考えられます。物を買うときには、企業の理念や行動まで注目するように心がけてみませんか?次回のハッシュタグ・アクティビズムをお楽しみに!

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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