
(Photo by cisc1970 / Adapted.)
2016年8月に公開された映画「ペット」に出てくるタトゥーが彫られたブタ。

(Photo by Wikia)
映画中で彼は「自分の身体にはタトゥーを入れる場所がもうなくなったから捨てられた」と告白する。
「タトゥー入りのブタなんてまた面白いことを考えたなあ」なんて優雅に思ってはいられない。
というのも作り上げたファンタジーの世界にとどまる話ではなく、現実世界でも行われていることだからだ。

(Photo by Lwp Kommunikáció)
驚くべきことに、タトゥーブタは映画のみならず、実際に私たちが住む世界にも存在している。
ブタの皮膚は人間の皮膚に似ていることから、タトゥーの練習に使われることがあるのだ。
さらにはアートという名の下に、ディズニーや某ファッションブランドのロゴをタトゥーされたブタが高額で取引きされることもあるという。
このアーティストの場合は、動物福祉に関する法規制が厳しいアメリカでの活動を断念した後に、法規制がアメリカよりは緩いとされる中国で活動を続けているという。

(Photo by Wikipedia)
動物福祉に関する法律が厳しい国では、アートといってもタトゥーブタは生まれない。
法整備は動物愛護にかかせぬものだ。
しかし日本においては、法整備に課題が残る。
2014年度には約10万1千頭もの犬猫が殺処分されており、動物天国とは言い難い状況の日本。
300年以上も前に「生類憐みの令」が発布されていた国とは思えない。
最近では、小池百合子都知事が犬猫殺処分ゼロを実現するために「税金を投入する方法もあるが、人間教育から始めるのがいちばんだ。動物を慈しむ気持ちを、子どもの頃から育てることに力を置いた方がいい」と発言したそうだ。
そもそも、2010年の内閣府の調査によれば「ペット飼育が好き」と答えたのは全体の72.5%にものぼっているのだから、決して動物に対して心のない人が多いとも思えない。
さらには、震災や飼い主の高齢化などの理由でどうしても飼えなくなってしまったペットや、街に溢れるペットショップでペットを安易に手に入れられる現状を踏まえれば、犬猫の里親団体に資金を投入したり、法整備を進めたりして動物たちの権利を向上させようとするのが現実的な政策なのではないか。
心の教育をいちばんだと言い切る姿勢は、一見正しく聞こえそうだが果たして効果的な政策といえるのだろうか。
それはしかし、待機児童を解消するためには空家を再利用すればいいという、潜在的保育士を無視した発言にも見られる歯がゆさとも似ているのではないか。

(Photo by star5112)
イギリスは動物愛護政策が進んだ国の一つとされる。
その歴史は古く、1824年には「動物虐待防止協会(現在の通称:RSPCA)」が発足し、1951年にはペットショップの経営を認可制とする「ペット動物法」が制定されている。
また、イギリスに行けばよく目にすることだが、犬が平気で(とは言ってももちろん飼い主同伴)地下鉄に乗ってくる。
ケージなどには入れられていないことが多い。
しかも、公園にはリードなしの犬が多く見られる。
しかし、そんなイギリスでも年間最大約4万2千頭が殺処分されている。
結局、動物の命はどこの国でも軽視されているのだろうか。
そこに待ったをかけるのがドイツだ。
ドイツはペットの殺処分が基本的にはゼロ。
大半がボランティアの寄付などにより成り立つ民間団体が運営する動物保護施設「ティアハイム」では、重度な病気や怪我を患っているペットを安楽死させる以外の殺処分は行わないそうだ。
動物たちの滞在期間は無期限で仲介率は90%以上だという。
また、檻の広さからリードの長さまで、犬を「慈しむ」ための法整備がきめ細やかになされている。
さらに、犬を飼えば、日本円にして約1万円〜2万円(100〜200ユーロ)の「犬税」が課される。
1頭目は約1万1千円(100ユーロ)、2頭目からは約2万3千円(200ユーロ)となり、2頭目は1頭目よりも高い「犬税」となる。
この税の背景には、無責任な飼い主を減らそうという思いがあるそうだ。
実は「犬税」は日本でもかつて採用されていた。
生類憐みの令の時代にはもちろんのこと、50年ほど前まで「犬税」が存在していたが、後者の「犬税」は徴収コストの問題から廃止されたそうだ。

(Photo by Big Ben in Japan)
映画「ペット」には、タトゥーブタ以外にも人間に捨てられたペットたちが多数出演する。
かわいそうだと思う気持ちは、映画を見れば生まれそうなものだが、その心が殺処分をゼロにしてくれるのだろうか。
イギリスやドイツなど動物愛護先進国の例を見れば、法整備を含めたルールを整えていくことが、今の日本に必要なことなのかもしれない。
via. Timeline, Daily Mail Online, 江戸ガイド, 日刊スポーツ, Japan In-depth, GORON, いぬログ, 環境省, 国立国会図書館, 内閣府政府広報室
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